第31回『大工ツールコレクションⅦ』

第31回『大工ツールコレクションⅦ』

正確にまっすぐな直線を引く。
この作業をフリーハンドで行う。
 
・・・限りなく至難の業ですね。というよりミッション・インポッシブルです(笑)。
 
我々の身を置く建築業界ではこの《直線》というやつが至るところに存在します。極端な話我々の造る木造家屋に於いては99%直線で構成されていると言っても過言ではありません。
 
で、材料にもその都度直線の墨を付けなければならないケースが多々あるわけです。その際フリーハンドがダメなら道具を使うしかありません。
短ければ以前このシリーズでご紹介した《差し金》などを使ったり、1メーターぐらいの直線であればそれなりの定規を使えば正確な直線を引く事が可能です!
ですが、それ以上の直線を引くとなると正直定規だと苦しいところです(^^;)。
 
と言う訳で、今回のツールアイテムは長い《直線》を材料に引ける【墨壺】をご紹介いたします。
 
F1020015.jpg
 
基本的に現在使用されている多くの【墨壺】は簡易に長い直線を墨打てる道具です!
 
写真には何種類か写っていますが機能は全て同じです(黒っぽいちょっと変わった形のやつだけが昔ながらの、と言うか本来の墨壺です)。
 
使い方は起点となるポイントに《カルコ》と呼ばれる針状のモノを打ち込み、壺から糸を引っ張り出し終点となるポイントで糸を押さへ、糸をつまみ上げるように持ち上げパッと離す。
これで材料に直線の墨が鮮やかに打たれる訳です!
 
ただ違うのは墨の色です。状況に応じて使用する墨汁の色を変えていきます。
 
基本はブラックです。もちろん無糖です。たぶん・・・(笑)。
この墨はたいていの材料にくっきりとラインを引けます。
 
次に朱墨(しゅずみ)。
赤というよりオレンジ色に近いです。
暗色の下地や石膏ボードなどに墨を打つときなどに使います。
 
他には消える墨汁!
 
これはどういうものかと言うと色的には紫色のラインなのですが、墨を打ってから数十分するとあら不思議!  墨付けた紫のラインが徐々に消えていきます。
 
化粧の丸太柱の芯墨やフローリングの化粧面などに致し方なく墨を打たなければならないケースに使用します。
墨の濃度によっては数分で消えてしまうので、もたもたしていると肝心な時に使えない事もあります(^_^;)。
時間との勝負ですね。
 
大きな声では言えませんが、言わば大工の秘密工作ツールというわけです(どんな秘密ですかっ)!
 
それと大工さんはあまり使いませんが白墨(チョーク)が打てるチョークラインなどという墨壺などもあります。
 
 
本来墨壺という道具は木材の墨付け時に使用する道具でした!
 
書道における硯のような役目を果たします。
筆にあたるのが《墨さし》と呼ばれる竹で出来たヘラ状のものです。 
 
この墨さしを墨壺に浸し木材に墨を付けていくわけです。
 
墨壺の形もさまざまです。亀を模したものや、龍を模したもの、変わったところでは『河童』をイメージした墨壺などがあります(これ、見たくなりません? 河童ってどんな姿でしたっけ?)。
 
 
とにかくかつての【墨壺】は工芸品としても価値のあるものが多数存在します。
 
墨壺はかつて(遥か昔ですが・・・)大工道具の3種の神器でした!
[差し金]、[手斧(ちょうな)]、[墨壺]と、みな墨付けと刻みに使われる道具です。
その中の【墨壺】にはこんな逸話があります。
 
明治時代に行われた東大寺南大門の修復の折りに 高い梁桁の上から一台の墨壺がそっと隠されるようにして置かれていたのが発見されたそうです。
あまりそのような場所では墨壺などは使わないことから、大工がわざと忍ばせたのではないかと・・・。
つまり一世一代の仕事を成し遂げた大工の棟梁が己の誇りと、ささやかな記念として当時としては大工の魂ともいえる墨壺を残してきたのではないかと・・・。
もちろん推察ですが、うっかり忘れたとか不法投棄ではないと思います(笑)。
 
いや~粋ですね!
自分も今度屋根裏にインパクトドライバーでも置いてこようかな…(笑)。
 
 
ところでタケシくん、その消える墨汁で宿題のノートにイタズラ書きをするのはやめましょう!
そういう使い方じゃないから…(笑)!
 
それではまた…。
2012-06